こんにちは。アメリカ中西部で暮らしているKhyle(カイル)です。
私は2019年に日系企業のアメリカ現地法人へ赴任しましたが、海外留学経験もアメリカへの旅行経験もありませんでした。
赴任前まで私が抱いていた「アメリカのビジネスパーソン」のイメージは、大ヒットTVドラマ『Suits(スーツ)』のハービー・スペクターしかありませんでした(笑)。つまりUp or Outの厳しい労働環境でバリバリ働くアメリカ人のイメージです。
他にも「アメリカだと○○」みたいな典型的なイメージしかなく、(日系企業ですが)実際にアメリカで働いてみたら、意外とイメージとは違ったアメリカ人の働き方を知りました。
今回は私がアメリカ赴任で知った「アメリカ人と日本人の働き方の違い」を、予想通りだったことと予想外だったことに分けてご紹介します。
私自身は「アメリカの方が合理的な働き方」なので良いなと感じていますが、合う・合わないは個人差があります。アメリカで働いてみたいなと考えている方は参考にしてみてください。
この記事はこんな人に役立ちます。
- 「アメリカで働いてみたいな」と興味を抱いている人
- アメリカ人と働き始めて考え方・価値観の違いに戸惑っている人
前提:アメリカ人と日本人は価値観・考え方が違い
大前提ですが、アメリカ人と日本人は価値観・考え方に大きな違いがあります。
歴史・文化・政策など様々な側面によるもので、「働き方」における違いもその一つです。
なお、アメリカ人と日本人の価値観・考え方の違いについてはこちらの記事を参考にしてください。
アメリカで働いて知ったアメリカ人と日本人の働き方の違い
赴任前の私はステレオタイプ的に「アメリカ人は日本人と違ってきっと○○だ」と思い込んでいたことがいくつかあります。例えば「アメリカ人は主張が強くて、なんでもズバズバ言うはず」みたいな感じです。
でも実際に働き始めると、予想通りだった違いと予想外だった違いの両方がありました。私の場合は半分以上が予想外でした。
まずは「働き方」について予想通りor予想外だった違いを挙げます。そして、特に意外だったものをピックアップして詳しく説明します(「★」マーク付き)
違いが生じる理由にはアメリカ人の価値観・考え方が関わって来ますので、アメリカ人とコミュニケーションを取る人には役立つと思います。
予想通りだったアメリカ人の働き方
- 5時ピッタリに退勤する
- 夕方5時になったら一斉に帰宅し始めます。6時以降に残っているのは日本人駐在員だけです
- 自分のスケジュールを優先する
- 休暇中は家族と過ごすことに専念します。ONとOFFの切り替えがはっきりしています
- プロジェクトが遅れていても「残業してでも終わらせなきゃ」という考えは希薄です
- すぐ転職していく
- 年齢やポジションに関係なく3年前後で辞めていく人がとても多いです
- 「合わない」と思ったら数週間〜数ヶ月で辞めていく人もけっこう見かけます
- 簡単には謝らない
- 失敗してもあまり気にしません。自身ではなく他に原因があったと考えることが多いです(タイミングやツールのせい)
- 訴訟やレイオフ(雇い止め)が多い労働環境なので「安易に自分に非があるような発言はしない」という文化も影響しています
予想外だったアメリカ人の働き方
- 飲み会がない
- 夕飯は家族と食べるのが基本です。年数回の会社行事やチームイベントで会食する程度です
- 外食は高いので昼食はランチ持参の人が多いです
- ストレートにズバズバ言わない(★)
- コミュニケーションはポジティブなコメントが90%以上を占めます
- ネガティブな表現をする場合はとても遠回しにします
- 上司の言うことに従順(★)
- 非合理的と思われることでもけっこう普通に従います
- 仕事の範囲が限定的(★)
- Job Description(雇用契約書)に定められている範囲の業務以外は基本対応しません
- アウトプットの質が低い
- 口頭会話でイメージ共有することが多いせいか、ものすごいラフな仕上がりです
- きっちりフォーマットに落とし込んだり、箇条書きでまとめたりしません
- 夜中でもメール返信してくる
- 役職やポジションや個人差がありますが、退勤後もメール返信くることがあります(特に管理職やビジネス職の人)
- 出社時間が早い
- 退勤時間は早い分、朝早くから勤務している人が多い印象です(ex. 8時半始業でも8時出社)
- 服装がかなり自由
- 業界や地域によりますが、Tシャツ、デニム、スニーカーがけっこう多いです
- 顧客訪問もスーツではなく会社ロゴ入りのポロシャツやフリースが多いです(製造業の場合。スーツは相手を緊張させてしまうため)
私が実際に経験したアメリカ人と日本人の働き方の違いは上記の通りです。
ビール2杯目で頭痛がする私は、日本の飲み会文化があまり好きではないので、飲み会がないのが一番嬉しいです。もちろんアメリカ人と気軽にランチに行ったりします。
予想外だった違いの中で「★」マークをつけたものをもう少し深堀りします。職場でのアメリカ人とのコミュニケ=ションに役立つ内容です。
【知らないと損する】アメリカ人の職場での意外な行動・考え方
その①:ネガティブワードは極力避けて遠回しに言う
実はアメリカ人もとても遠回しな表現で話すことがあります。それはネガティブなコメントやフィードバックをするときです。
基本的に「褒めて伸ばす」文化なので、良いところを見つけてまず褒めちぎります。どんな些細なことでも「Great!」とか「Awsome!」とか言います。
前半90%くらいをポジティブで埋め尽くした上で、遠回しな表現でネガティブな部分をフィードバックします。その時も、なるべく客観的な事実、実績を数字に基づいてフィードバックします。
簡単に訴訟する社会なので、有事の際に倍返しを喰らわないようにとても紳士・淑女な対応をします。
TVドラマ『Suits』で多用されるFワードやSワードは、オフィス内では滅多に聞きません(笑)
その②:上司の指示に従順
以前、ビジネスセンスのある聡明なアメリカ人同僚がいました。私から見ても「それは非合理的だよ。。」という依頼でも、上司からの指示であればその同僚はあっさり引き受け実行していました。
『Suits』のイメージしかない私は「納得いかないことは上司でも言い返す」と考えていたので、正反対の対応に長らく違和感を感じていました。
ある日、異文化理解の外部研修を受けた際に講師に質問したところ、とても腹落ちする回答をいただきました。「アメリカ社会の成り立ち」に起因しています。
要約するとこんな感じです。
- 多様な文化が存在するアメリカ社会では、生きていくためには自身の文化とは異なる文化のコミュニティ(会社組織や地域・団体など)に参加する必要がある
- コミュニティにはヒエラルキー(階層)が存在し遵守する必要がある(できなければレイオフ)
- よって、上司の指示には基本的に従う(雇用契約書の範囲内なら原則)
とても納得です。
一方で、上司とソリが合わなければ即転職していきます。流動的な雇用とそれを支える転職市場も背景の一つになっています。この点についてはアドバイスを後述します。
その③:業務範囲が限定的
従業員の一人一人が雇用時のJob Description(ジョブディスクリプション; 雇用契約書のこと)で業務内容を定められています。
責任の所在が明確なので良い点はあるものの、「それは私たちの部署の仕事ではない」の一点張りで仕事が進まない場面もあります。
日本人から見れば「融通が利かない」とも映りますが、なんでも押し付けられてしまう日本の組織もどうかなと思うので、一長一短です。
失敗しないアメリカ組織での働き方のアドバイス【失敗した駐在員より】
私もアメリカでの働き方や仕事への価値観などをしっかり理解せず、赴任当初はたくさん失敗しました。
そこで、「もし最初に戻れるのであればこれだけは気をつけたい」という点を3つだけ挙げておきました。
気をつけたいこと①:リレーションシップを大切にする
前述の通り、流動的な雇用環境なので誰とどこで再び一緒に働くか分かりません。
私もまさか、アメリカに残って挑戦していくとは考えてもいませんでした(笑)
任期の決まっている異国地とはいえ、もし日本へ帰国しても海外と関わる仕事をされる場合は、いつどこでそのコネ(よくNetwork; ネットワークと言います)が活かせるか分かりません。
よっぽど嫌いな人でなければ、一緒に働いている間はアメリカ人とは良いリレーションシップを築いておいた方が良いです。
なお、アメリカではLinkedIn(リンクドイン)というビジネスSNSをほぼ全てのビジネスパーソンが利用しています。転職活動もLinkedInを介して行われるため、海外就職や転職にご興味ある方は登録しておくことをお勧めします。
気をつけたいこと②:「日本ではこうしていた」は使わない
ノウハウの共有であれば構いませんが「日本のやり方のほうが長けている」みたいな意識で伝えることはお勧めしません。
ここはアメリカです。日本ではありません。聞いているアメリカ人はみんなそう思っています。
アメリカのために、何が最適な方法は何かを一緒に考えていく姿勢がとても大切です。
気をつけたいこと③:アメリカ人も自分に対して我慢してくれていることを忘れない
特に最初の頃は、日系企業駐在員だと「海外経験を積ませてもらいにきました」みたいなお客様感を持ちやすくなってしまう場合があります。
日系企業だと、本社(=日本)を知っているが故に大なり小なり「自分の方が知っている・分かっている」みたいな優越感を抱いてしまうかもしれません。
でも、最初からネイティブ並みに英語が話せれば別ですが、敢えてキツい表現をすると「世界公用語の英語すらロクに話せない人」に対して、アメリカ人も気を遣って接してくれています。
言いたいことを英語で言えなくても、理解しようと手を差し伸べてくれます。
相手も我慢して、それでも協力してくれているので、リスペクトの気持ちを忘れないようにしましょう。
参考:異文化理解に役立った書籍やビデオのご紹介
私自身も異国での生活に悩んだ時期があり、これらの書籍を読んで異文化理解について学びました。
『異文化理解力 – 相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教養』(英治出版)
文化の違いを「コミュニケーション」「評価」「決断」など8つの指標で整理されていて、各指標において比較する文化同士の相対的な位置関係(=どれだけギャップが大きいか)の理解が重要と学びました。
実際の出来事をベースにした事例が多く、どういう時に考え方のギャップが生まれるのかが分かりやすかったです。
『経営戦略としての異文化適応力 ホフステードの6次元モデル実践的活用法』(日本能率協会マネジメントセンター)
「ホフステードの6次元モデル」というフレームワークで文化同士の違いを整理しています。各指標において各国がどういう位置にあるのか(=どういう傾向の国なのか)がまとまっていて分かりやすかったです。
TVドラマ『Suits(スーツ)』
本記事で何度も登場しましたアメリカの大ヒットTVドラマです。こういうUp or Outのバリキャリなアメリカも当然存在しますので、ぜひ楽しんでご覧ください。
法律・ビジネス関連の難しい英単語も出てきますが、スピードの速い英会話に慣れる意味でも参考になります。
まとめ
いかがでしょうか?「もっとこうしていれば」という後悔もしましたが、これからアメリカで生きていくと決めたからには、同じような失敗をしないように私も心がけています。
- アメリカと日本では働き方にたくさん違いがある
- アメリカ人と働く上では「リスペクト」「アメリカのために」「良いリレーションシップ」を常に心がける
Thanks!