実質値上げがもたらす悪影響とは【ブランド力を落とし競争力低下】

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在米ながら日本食スーパーで有名なMitsuwa Marketの近くに住んでおり、幸いにも苦労なく日本食にありつけています。

なかでも私のソウルフードは納豆。幼少期にファンになって以来、手に入る環境にいる限りほぼ毎日食しています。

そんな納豆の1パックの中身が減り続けています。値段は据え置くけど内容量を減らす、いわゆる「実質値上げ」(SNSなどでは「ステルス値上げ」とも)によるものです。先日こんな関連記事を読みました。

正直、この実質値上げには危機感を抱いています。なぜなら商品の競争力だけでなく日本のブランド力も落としてしまうからです。

目次

『Shrinkflation』『ステルス値上げ』と呼ばれる実質値上げ

価格は据え置きだけど知らずに内容量が減っている商品は納豆以外にもあります。

お菓子、トイレットペーパー、コンビニ弁当など。特に食品や日用品は生活に欠かせないアイテムなので消費者からの指摘も多いです。

日本のSNSやインターネット上では『ステルス値上げ』と呼ばれるこの値上げは、海外では『Shrinkflation』(「Shrink=縮む」+「Inflation=インフレ」)という造語が使われたりします。

実質値上げが起こる理由

簡潔に言うと、実質値上げは「小売価格の値上げからの”逃げ”」と考えています。

なぜなら値上げは難しい判断が伴うからです。値上げで失敗すると以下のような影響がでます。

  • 顧客の買い控えやブランドスイッチが始まり売上減少
  • SNSやインターネットで炎上し企業・商品の評判低下
  • 顧客が離反し市場シェアを競合他社へ奪われる

このリスクを避けるために価格据え置きで内容量だけ減らすのですが、他にもこんな要因が考えられます。

値上げに過剰反応しやすい日本人

日本人は値上げを鬼や悪魔かのように捉える印象があり、少しでも値上げしようものなら批判の集中砲火を浴びせます。

例えば吉野家、松屋、すき屋など牛丼はたった10円〜20円の値上げでテレビのニュースになるくらいです。

価格競争に陥りやすいコモディティ商品

食品や日用品などの消費財は競合他社との差別化が比較的難しく、消費者の購入理由が価格によってスイッチしやすいです。

例えばスーパーで安売りしている食材・食品があれば、よっぽど好きでたまらないもの(好みのスイーツとか)でなければ安価な方を購入することはよくあるのではないでしょうか。

実質値上げの繰り返しで起こりうる悪影響

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前述の通り、実質値上げはある意味「逃げ」の施策であり、これを繰り返すと大事なものを失います。

それは「企業や商品のブランド力」です。

例えば冒頭の納豆も、昔は1パック50グラムだった中身が45グラム、40グラムと徐々に減り、開けた時に「えっ?これだけ?」ってなる量になってしまいました。

一方、飲食店が良い例ですが、アメリカでは1品ごとの量はこれでもかというほど多いです。

身体や胃袋の大きさの違いもありますが、量が少ないとYelp(日本の食べログみたいなアプリ)などで低評価になってしまい顧客を獲得できません。

もちろん廃棄を増やすのは良くないのでどの店でも頼めば持ち帰り用の容器をくれます。

先進国中心にみると「基本的に量は多め」の国・地域の方が多いと思います。

なので、諸外国の方々が日本のお菓子やコンビニ弁当を見た時に間違いなく「えっ?これだけ?」という感覚と貧相な印象を抱きます。

こんな商品ばかりを見ていると、商品だけでなくその企業や国に対して抱くであろう印象もイメージできるのではないでしょうか。

実質値上げに逃げずに収益改善する方法

経営判断にリスクが伴うのは値上げに限りません。よって、リスク覚悟を前提として以下の対策が考えられます。

方法1:高値で売れる顧客・地域を探す

日本のブランド力がまだ活かせる地域や顧客を探しましょう。

日本よりも物価の低い地域でも価格競争は待っていますが、重要なのは「その値段でも買ってもらえるマーケティング戦略」です。

方法2:値上げを受け入れてもらうストーリー作り

内容量そのままに値上げをしてみるべきです。

日本は基本的には温情的な国民性の国なので、心に訴えかける値上げの背景と展開方法を考えましょう。これこそがマーケティング戦略です。

2018年頃、ヤマト運輸や佐川急便など配送業界が一気に配送料値上げしましたが、背景にあった配達員の過酷な労働環境はニュースやYouTubeでもたくさん配信され多くの利用者に受け入れられました。

方法3:KPI管理と判断基準

値上げの目的で一番多いのは収益改善です。たとえ売上が下がっても目標の収益が獲得できれば目的達成です。

この点をよく理解せず「売上も収益も絶対!」の経営層はよく目にします。

もちろん売上減にも許容範囲はあるので「ここまで減ったら切り戻す」のようにKPIをしっかり決めて管理することが大切です。

消費者(=顧客)側にも求められる意識変革

圧倒的なマーケティング戦略があればApple製品のように高価格でも消費者に受け入れられますが、販売価格を上げられないとコストダウンの方向しか考えられなくなります。

結果的にはサプライチェーンのどこか(=どこかの商品・企業)の価値を下げるばかりです。

一方で、「安くて高品質」という謳い文句は綺麗に聞こえますが、世の中「良質なものは高価」が基本です。

それにも関わらず「企業努力」という言葉で供給側に求めているので、日本企業や日本の価値が相対的に安くなっていっているのです。

消費者側でも「良いものを買うためにもっと稼ぐ」といった発想を持つべきだと考えています。

まとめ

いかがでしょうか?「お客さまは神様」という考え方は、良くも悪くも、という両面を持っていると思っています。

この価値観が企業努力と技術発展を促した時代も確かに合ったのでしょうが、バランスをとることが必要なのではないかとも考えています。

以上です。Thanks!

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