こんにちは。アメリカ中西部で暮らすKhyle(カイル)です。
今回はアメリカの401k(確定拠出型年金)について調べました。
401k?確定拠出型?難しくてよくわからないよ。。
年金なんて、もっと歳とってから考えればいいんじゃない?
私もずっと同じ考えでした。なので、これまで何も調べてこなかった人間の一人です。
アメリカで生きていく覚悟を決めてからお金の稼ぎ方を改めて学び始め、金融収支を高める一環として401kについて調べてみました。調べた結果、10年以上の社会人生活で「もっとお金節約できたのに。。」と後悔しました(笑)
日本でもiDecoやNISAなど節税対策が浸透し始めているので、アメリカの401kへ興味をもった人もぜひ参考にしてみてください。
この記事はこんな人たちの役に立ちます。
- アメリカで投資・節税・蓄財などに興味を持ったばかりの人
- アメリカの401k制度(確定拠出型年金)に興味をもったばかりの人
アメリカの年金制度の全体像
401kの説明の前に、アメリカの年金制度の全体像を簡単にご説明します。そのほうが理解もスムーズです。日本の年金制度もアメリカに倣っている部分があり、同じような仕組みです。
- 公的年金
- 私的年金(私的年金はさらに2つに大別)
- 個人年金
- 企業年金(企業年金はさらに2つに大別)
- 確定給付型年金(DB Plan; Defined Benefit Plan)
- 確定拠出型年金(DC Plan; Defined Contribution Plan)
それぞれ詳しくみていきます。
1. 公的年金
国(政府)が将来支払ってくれる年金です。社会保障金(Social Security)を支払っている人=受給資格のある人に給付されます。
2. 私的年金
自分自身で老後に備えて積み立てる年金のことです。下記の2つに大別されます。
2-1. 個人年金
個人で積み立てる年金プランです。個人事業主の方々が利用します。IRA(Individual Retirement Account; 個人退職金勘定 )と呼ばれます。
2-2. 企業年金
企業が従業員に向けて提供する年金の積み立てプランです。大きく2つのタイプに分かれます。
2-2-1. 確定給付型年金(DB Plan; Defined Benefit Plan)
将来の給付金額が確定した積み立てプランです。確定拠出型年金(DC Plan)に置き換わり今や少数派です。
2-2-2. 確定拠出型年金(DC Plan; Defined Contribution Plan)
従業員からの拠出金額を確定した積み立てプランです。401kはこのDC Planに該当します。
アメリカの401k(確定拠出型年金)ってどんな制度?
日本でも「iDeco」の名称で普及しつつありますが、アメリカの401k(確定拠出型年金)がベースの制度です。ちなみに401kと書いて『フォー・オー・ワン・ケイ』と呼びます。
401kという名称の由来は、IRC(Internal Revenue Code; アメリカの内国歳入法)に401条k項という「所得税の繰り延べ」に関する条項が追加され、この401条k項を満たす(=所得税の繰り延べができる)年金制度が401kと呼ばれるようになりました。
401k(確定拠出型年金)がアメリカで普及した理由
アメリカの社会保障制度は(特に若い世代に対して)だいぶ崩壊しているようです。原因をいくつか書きます。
- 政府が支出補填のために社会保障の財源を使ってしまっている
- (若い移民を除くと)高齢化が進み、財源の税金(社会保障税)の支払い額が減っている(若者1人あたりの負担額が増え払えない人も増えている)
- 財源が減り、拠出金の運用利益も増やしづらく、将来の給付金額はさらに少なくなる懸念
この「国に頼れない」状況と、後述する401kのメリットが普及の背景にあります。
なお、アメリカでは源泉徴収という仕組みがなく、個々人で納税書類を作成します。支払う税金を自分で計算するので、日本の社会人よりも納税金額を意識しやすい環境です。
401k(確定拠出型年金)の仕組みとメリット
仕組みは拠出時・運用時・引き出し時の3ステップで考えると分かりやすいです。
- 拠出 →プランを決める、お金を積み立てる
- 運用 →積み立てたお金を運用する
- 引lき出し →積み立てたお金を引き出す
つまりは「若い時に貯蓄しておいて(運用して増やして)老後に引き出す」という流れです。
各ステップで得られるメリットや注意点を説明していきます。
Step 1:拠出する
拠出金を運用するプランを自身で決めます。その後、毎月一定額を拠出していきます。
メリット
- 給与天引きなので手続きの手間を省けます
- 拠出金額への所得税(Federal Income Tax)は引き出し時まで繰り延べられます(=非課税, Tax deferred)
- 会社によっては掛け金を追加拠出(=マッチング拠出)制度あり、会社からお金がもらえます
注意点
- 運用成果次第では将来の受け取り金額は増えたり減ったりします。自己責任なので何も考えずに選ぶのはやめましょう
- 拠出金の上限金額は年間$20,500です(2022年12月時点)。2023年からは年間$22,500に増加するようです(IRSのこちらのページをご参照ください)
- 会社がマッチング拠出したお金は、在籍期間が短いと退職時に会社へ返金する必要がある場合があります
Step 2:運用する
拠出金を投資会社がプランに則って運用します。
メリット
- 拠出金運用による利益も引き出し時まで繰延べられます(=非課税)
注意点
- 運用成果を定期的に見て、成果が良くなければプラン変更を考えましょう
- 管理手数料(Administration fee)が高くないか確認しましょう。「隠れ手数料(Hidden Fee)」などと呼ばれ、運用利益を大きく削られるケースもあるようです
Step 3:引き出す
これまで積み立ててきたお金を引き出します。引き出し開始と同時に、これまで繰延べた税金を支払っていきます。
メリット
- 大体の人は、働いている現在の年齢よりも引退時(≒引き出す時の年齢)のほうが所得も低く適用税率が下がるため、支払う税金を減らせます
注意点
- 59歳6ヶ月を経過したらお金が引き出せます。それ以前に引き出すこともできますが、その時点の所得税+州税+ペナルティー(10%追加)を支払う必要があります
- 72歳になったら引き出し開始しなければなりません(RMD; Required Minimum Distributionと言います)。年齢制限の詳細はIRSのこちらのページをご参照ください
アメリカ駐在員は401kを利用したほうがよいか
勤め先の401k制度や個々人の置かれている環境で異なります。私個人の意見は「よく知らない場合は加入しないほうがよい」です。
考えられるメリットと注意点を記載しますので、これらを判断する際のポイントにされるとよいかもしれません。
駐在員でも得られるメリット
- 節税できる
- 会社がマッチング拠出していれば会社からお金がもらえる
駐在員が注意しなければならない点
- 日本帰国後も401k口座を維持できるかを確認(維持できない場合、積み立てていたお金は一旦全て引き出さなければならない=ペナルティーを支払わなければならない)
- 日本帰国後も引き出したお金を受け取るためのアメリカ銀行口座を維持できるかを確認(Wire Transferだと手数料が送金手数料がかかる)
Wire Transferといった国際送金については以下の記事で説明しているのでご参考にしてください。
アメリカで非駐在員として働く場合の401kの諸情報
私は今後、米系企業で働くことを目標にしているので、今回401kについて調べた中で今後役立ちそうな内容を備忘録的にまとめました。
転職時は401kの処理方法【Rollover(ロールオーバー)がおすすめ】
雇用の流動性が高いアメリカでは(自発的にせよLay-offにせよ)転職が頻繁に行われます。
これまで積み立てた401k拠出金は、転職時は以下のいずれかで処理します。
- 従来の勤め先で401k口座を維持する(ただし会社によってはNG)
- IRA(Individual Retirement Account; 個人退職金口座)にRolloverする
- 新しい勤め先の401k口座にRolloverする
- 引き出す(課税+ペナルティーの支払いが必要)
中でも、転職先に資産移管するロールオーバー(Rollover)がおすすめです。
一旦拠出金を引き出してしまうとその時点で課税+ペナルティー支払いが必要になってしまいます。
ロールオーバーのメリット
- ペナルティー(+10%)を支払わなくてよくなります
ロールオーバーに関する注意点
- 転職先が401kを運用している場合に限り401k口座へのRolloverができます
- 転職先が401kを運用していない場合はIRA(Individual Retirement Account; 個人退職金口座)にRolloverができます
- Rolloverの期限はIRA口座開設または通知を受け取ってから60日以内に実施する必要があります
- 自身の銀行口座で拠出金を一時保管したままでも課税されてしまうので注意が必要です
転職時の401k口座の処理方法はアメリカ投資会社のFidelityのこちらのページに詳しく掲載されていますのでご参考にしてください。
401kを運用した場合の企業側のメリットと注意点
冒頭に401kが普及した理由を記載しましたが、もちろん、従業員(employee)だけでなく企業(employer)にとっても十分なメリットがあったので401k(DC Plan)は普及しました。
企業側のメリットと注意点も参考程度に記載しておきます。
企業側の401kを運用するメリット
- 従業員の拠出金の運用状況が悪化しても、企業が追加拠出して補填する必要がありません
- 企業のマッチング拠出金額は損金扱いでき、その分企業も節税できます
- べスティング(Vesting; 就業年数に応じて拠出金を増やす)などの段階的マッチング拠出も設定でき、人材の長期就業を促せます
- 確定給付型年金(DB Plan)に必要な複雑な年金数理計算が不要になり(CPAの勉強で少しかじりましたが、本当に計算が複雑です。。)、ブラックボックス化しづらく横領などの不正抑止につながります
企業側の401kを運用する際の注意点
- アメリカ労働省(Department of Labor)により管理されている制度なので規制・罰則規定も多く、違反しないように監視が必要です
- 従業員への401k制度に関する教育が必要です
まとめ
いかがでしょうか?蓄財に詳しい妻と結婚するまで全く関心が無かった年金や401k制度ですが、調べてみると「これまでの人生でけっこう損しているな」と反省しました。。。
アメリカでサバイバルしていくためにも、お金の稼ぎ方・貯め方についてこれからも勉強していきます。
- アメリカでは401k(確定拠出型年金)を利用して自分で将来の年金を積み立てていく必要あり
- 401kで節税もできる(生涯で支払う税金を減らせる)
- アメリカ駐在員は日本帰国後の401kや銀行口座が維持できるかを先に確認すること
Thanks!